PostHeaderIcon 40-32÷2=4!の一般解 (3) 階乗素数との関係

前回:40-32÷2=4!の一般解 (2)

さて、前回までに分かったことを一旦まとめてみましょう。

 

まず問題ですが、
\[
\begin{equation}
x-\frac{y}{z} = w!
\end{equation}
\]
\[
\begin{equation}
\frac{x-y}{z} = w
\end{equation}
\]

を満たすような$1$以上の正整数$x$, $y$, $z$, $w$を求めよという問題でした。

 

これに対し、これまでの議論から、適当な$z$, $w$を選ぶと
\[
\begin{equation}
x = \frac{z w ((w-1)!-1)}{z-1}
\end{equation}
\]
\[
\begin{equation}
y = x – z w
\end{equation}
\]

と解が得られることがわかっています。

 

ただし、$w$に対する$z$において、解が得られるための下記の制約条件がありました。
\[
\begin{equation}
z < (w-1)!
\end{equation}
\]
\[
\begin{equation}
(z-1) | (w ((w-1)! – 1))
\end{equation}
\]

条件(5) は 式 (4) に対し $y > 0$ から得られます。一方、条件(6)は式(3)の$x$が整数であることから導かれました。

 

 

ここで(6)を考えた時に、もし仮に $(w-1)! – 1$ が 素数だとすると、

「$w ((w-1)! – 1)$の約数の集合」 = 「$w$ の約数の集合」+「$w$ のそれぞれの約数×$(w-1)! – 1$の集合」

がすべての$z-1$の候補の集合となります。

「$w$ のそれぞれの約数×$(w-1)! – 1$」は条件(5)を満たしませんから、

結果 $z$ の候補は 「$w$ の約数+1」に限られます。

 

$(w-1) = n$としたとき、$(w-1)! – 1 = n! – 1$と表されるわけですが、このような形で表される素数は階乗素数と呼ばれます。実際計算してみるとわかりますがすべての$n! – 1$が階乗素数となるわけではありません。

3!-1 = 5
4!-1 = 23
6!-1 = 719
7!-1 = 5039
12!-1 = 479001599
14!-1 = 87178291199

は階乗素数ですが、下記は合成数となります。

5!-1 = 7 * 17
8!-1 = 23 * 1753
9!-1 = 11^2 * 2999
10!-1 = 29 * 125131
11!-1 = 13 * 17 * 23 * 7853
13!-1 = 1733 * 3593203
15!-1 = 17 * 31^2 * 53 * 1510259
16!-1 = 3041 * 6880233439
17!-1 = 19 * 73 * 256443711677
18!-1 = 59 * 226663 * 478749547
19!-1 = 653 * 2383907 * 78143369
20!-1 = 124769 * 19499250680671
21!-1 = 23 * 89 * 5171 * 4826713612027
22!-1 = 109 * 60656047 * 170006681813
23!-1 = 51871 * 498390560021687969

 

翻って、階乗素数となる、本問題の解を列挙してみると、たとえば$w-1 = 3, 4, 6, 7$ のときは、

40 – 32 / 2 = 4!
30 – 18 / 3 = 4!
25 – 5 / 5 = 4!
230 – 220 / 2 = 5!
138 – 108 / 6 = 5!
10066 – 10052 / 2 = 7!
5752 – 5696 / 8 = 7!
80624 – 80608 / 2 = 8!
60468 – 60444 / 3 = 8!
50390 – 50350 / 5 = 8!
45351 – 45279 / 9 = 8!

となって確かに「$w$の約数+1」の$z$のときに解が得られることがわかります。

 

同様に、もっと大きな数の階乗素数を考えれば、いくらでも問題を作ることができます。

 

Wikipediaによると、現在知られている階乗素数は、$n$がそれぞれ

3, 4, 6, 7, 12, 14, 30, 32, 33, 38, 94, 166, 324, 379, 469, 546, 974, 1963, 3507, 3610, 6917, 21480, 34790, 94550, 103040

のときであるから、$w = 103041$ として問題を作ることも原理的には可能です。$103040!$ が正確に計算できれば、ですが(笑)。

$103040! -1$が階乗素数であることは、2010年12月14日にJ. Winskillによって発見されたそうです(MathWorld “Factorial Prime” 記事より)。

 

次は、$(w-1)! – 1$ が合成数の場合について考えてみましょう。

 

次回:40-32÷2=4!の一般解 (4)

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